ハイドビハインドとは?振り返っても見えない森のUMAと、木こりが語った怪物の正体

木の陰から黒い毛の体をのぞかせるハイドビハインドの挿絵 海外のUMA

森で背後に何かの気配を感じ、振り返る。

そこには木が立っているだけなのに、歩き出すと、また後ろが気になる。

ハイドビハインドは、どれほど素早く振り向いても、木の陰や人の背後へ隠れてしまうと語られる怪物です。

北米の木こりの話に登場し、ハイド・ビハインドとも表記されます。

長い黒い毛、細い体、強い爪という怖い姿の一方で、酒のにおいが苦手という妙な弱点もあります。

正体を先に答えると、確認できたのは1928年と1939年の本に記された怪物の物語であり、捕獲された未知動物や、特定の失踪事件の犯人ではありません。

では、誰も見つけられないはずの獣について、古い本は何を語っているのでしょうか。

ハイドビハインドとは?細い木の後ろに消える黒い獣

細い木の幹に身を寄せて隠れるハイドビハインドの挿絵

顔も前後も分からない、長い毛の怪物

ヘンリー・H・トライオンの『Fearsome Critters』(1939年)では、ハイドビハインドは二本足で歩く、背丈約6フィートの獣として紹介されています。

約1.8メートルという、人間に近い高さです。

ところが体は細く、太さ10インチほどの木の幹の後ろに、すっかり隠れられるといいます。

10インチは約25センチです。

身長ほどには体の幅がない、その極端な細さが怪物の能力につながっています。

体を覆うのは、長く厚い黒い毛です。

毛が深すぎて顔の位置が分からず、こちらへ来るのか、向こうへ去るのかさえ判別しにくいという姿です。

短く力強い前脚にはクマのような爪があり、尾は反り返っています。

振り向く速さよりも速く、背後へ回る

同書のハイドビハインドは、開けた場所には現れず、いつも木の幹に隠れています。

疑った相手が振り向いても、それより素早く動き、常に背後にいられるというのです。

木を一本確かめれば安心できる、という話ではありません。

自分の向きが変わるたび、隠れている場所も変わってしまう。

見える姿よりも、確かめようとしても確かめられない感覚が、この怪物の怖さをつくっています。

姿と習性の原文:Henry H. Tryon『Fearsome Critters』ハイドビハインド(1939年)

1928年の本に残る話|ロスト・リバーで見つかったもの

雪の森と川のそばで木の陰に隠れるハイドビハインドの挿絵

語り手ウィリアム・アレンの夜話

1939年より前の記述を探すと、レイク・ショア・カーニーの『The Hodag and Other Tales of the Logging Camps』(1928年)にも、この獣の話があります。

舞台は、食事を終えた木こりたちが集まって話を聞く宿舎です。

物語の中で語り始めるのは、森を調べ歩く仕事をしているウィリアム・アレンという人物です。

木の後ろに隠れる習性から、この動物を「ハイド・ビハインド」と呼ぶ、と説明します。

アレンが語るのは、ロスト・リバーを渡った際、腹を裂かれた水鳥と、奇妙な爪の足跡を見つけたという話です。

彼はそれを、怪物が食事をした証拠だと受け取ります。

直前に食べたなら、7〜8年は食事をしなくてもよいから、警戒を緩めたとまで語るのです。

怖い発見を話しているのに、安心する理由は妙に大ざっぱです。

この「本当らしい森の細部」と「途方もない生態」が並ぶところに、木こりの大ぼら話らしさがあります。

1928年は本の出版年であり、この遭遇が起きた年ではありません。

また、ここで読めるのは登場人物が語る物語です。

現場写真、採取した足跡、獣の標本がそろった事件記録としては扱えません。

物語の原文:Lake Shore Kearney「The Hide Behind」(1928年)

酒のにおいが苦手という、恐怖の中の冗談

1928年の獣は、人を襲う恐ろしい存在として語られます。

それなのに、獲物から酒のにおいがすると嫌がり、森へ消えてしまうという弱点があります。

物語の最後には、その弱点を使って仲間をからかうやり取りが入り、怪談が宿舎の冗談へと変わります。

怖がらせるだけでなく、聞き手同士で笑える話にもなっているわけです。

1939年には、約25センチの木と一本のビールへ

1939年の解説にも、酒のにおいを嫌う性質は残っています。

さらに、特定のビール一本で身を守れる、という話まで付いています。

これは怪物の話に添えられた冗談として読む部分で、野外の安全対策として薦められるものではありません。

背丈の数字にも違いがあります。

1928年は5フィート10インチ、1939年は約6フィートです。

どちらも標本の測定値ではなく、それぞれの本が描く怪物の設定です。

ハイドビハインドの正体は?目撃事件と物語の境目

木を回り込む黒い毛のハイドビハインドを描いた挿絵

失踪の犯人と断定できる記録はある?

森で人を襲う獣と聞くと、実際の行方不明事件がきっかけだったのでは、と考えたくなります。

ただし、今回読んだ二つの原文からは、特定の失踪者や捜索記録とハイドビハインドを結び付ける根拠は確認できません。

物語のアレンも、ここで直接見たと語るのは水鳥の死骸と足跡です。

そこから怪物がいたと判断する筋書きと、実際にその動物を確認することは別です。

現在の失踪事件を、この伝承が説明したことにはできません。

目撃日時や撮影者を確かめられる当時の写真・映像も、今回確認した資料にはありませんでした。

本に残る姿と、見られないという仕掛け

一方で、怪物がどのように描かれてきたかは、古い挿絵からたどれます。

1939年の本の挿絵には、幹に隠れた黒い体や、木の向こうからのぞく部分が描かれています。

マーガレット・ラムジー・トライオンによる1939年のハイドビハインド挿絵を使用した掲載図版
出典:Margaret Ramsay Tryonの挿絵を掲載したLumberwoodsの原文ページ(原著1939年、文章・挿絵はパブリックドメインと明記)。

これは目撃写真ではなく、語られた性質を絵にした資料です。

顔が分からないという説明なのに、全く何も描かないわけにはいかない。

その難しさが、木の幹の使い方にも表れています。

「見つからないのは、隠れるのが上手だから」という設定は、目撃できないことまで物語の一部にしてしまいます。

これは記事としての読み解きであり、生物学的な発見や、実在を裏付ける説明ではありません。

結論:木こりの語りに記録された、背後の恐怖

結論:ハイドビハインドは、1928年と1939年の本に姿や習性が残る森の怪物です。

今回の資料から分かるのは伝承の内容と語られ方であり、捕獲・撮影された未知動物としての正体や、現実の事件との関係は確認できません。

長い毛で顔が見えない。

振り向いても木の向こうへ隠れる。

この怪物が利用しているのは、森の広さだけでなく、自分の背後を見続けることができないという、ごく身近な不安です。

古い本を閉じてから木の多い道を歩くと、今まで気にしなかった幹の向こうが、少し気になるかもしれません。

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