シャーリーの正体は?パイエット湖で動いた「丸太」と怪物の目撃史

パイエット湖に浮かぶシャーリーの想像図 海外のUMA

湖に浮いていた大きな丸太が、うねるように動き始める。

そんな目撃談が伝わるのは、米国アイダホ州マッコールのパイエット湖です。

この湖の怪物には、シャーリーという親しみやすい名前が付いています。

恐竜を思わせる頭、目立つ顎、ラクダのように盛り上がった背。

地元で語り継がれるその姿は、ただの大きな魚とは少し違います。

けれど、物語を追っていくと、怪物の姿と同じくらい興味深いのが、住民が名前を付け、新聞が話題をつなぎ、資料館が記録を残してきた過程です。

シャーリーの正体は、今回確認した資料では特定されていません。

確かめられるのは目撃談と地域の伝説の歩みであり、湖に未知の大型動物が生息すると証明されたわけではありません。

では、何がそこまで人々の目を湖面へ向けさせてきたのでしょうか。

シャーリーとは?恐ろしい湖の主に付いた親しみやすい名前

恐竜のような頭とこぶを持つシャーリーの挿絵

地元の観光・地域情報サイトVisit McCallが紹介する初期の話では、1920年、鉄道用の枕木を作る作業員たちが、湖の大きな丸太のようなものを見ています。

それが動き、うねり、水の跡を残して進んだというのです。

これは当日の写真を確認した報告ではなく、後世の地元史紹介を通じて伝わる目撃談です。

怪物は以前、スライミー・スリムと呼ばれていました。

1954年、地元紙が名前を募集し、ラジオ番組の決まり文句を踏まえた「Sharlie」が選ばれたと紹介されています。

古くから同じ名前の怪物が語られていたのではなく、目撃騒動の後に現在の呼び名が定着した点が面白いところです。

参照:Visit McCall「Sharlie the Payette Lake Monster」

シャーリーという名前がなかった頃の新聞を読むには

古い報道を探すなら、Sharlieだけでなく、以前の呼び名Slimy Slimも手掛かりになります。

実際、後で紹介する1944年のTIME記事の見出しは「Slimy Slim」です。

いま親しまれている名前を知らない時代の読者も、この湖に何かがいるのではないかと新聞を読んでいたわけです。

1944年と1946年の目撃――巨大な体より気になる「泳ぎ方」

湖の狭まる場所を泳ぐシャーリーを描いた挿絵

1944年の騒動について、地元報道BoiseDevは、ナローズと呼ばれる湖の狭い区間付近で目撃が報告されたと紹介しています。

報告された長さは少なくとも35フィート、約10.7メートル。

恐竜に似た頭や顎、こぶ、硬い殻を思わせる皮膚という特徴が語られ、話題は地域の外へ広がりました。

参照:BoiseDevによるシャーリーの歴史紹介

1946年には20人のグループによる目撃があったとVisit McCallは紹介しています。

その中の医師G・A・テイラーは、40フィートほどに見え、何度も潜り、小型モーターボートのような航跡を残したと述べたとされます。

体長だけでなく、潜ったことや水面の変化が一緒に伝えられているのが特徴です。

目撃談を比べる際には、「長い何かを見た」という共通点だけでまとめない方が、この事件の輪郭が見えてきます。

丸太のように見えた話、頭やこぶが描写された話、潜水と航跡が印象に残った話は、観察された内容が同じではないからです。

当時のTIME記事には、ボートから見た人の言葉が残る

1944年8月21日付のTIME「IDAHO: Slimy Slim」には、トーマス・L・ロジャーズという人物の報告が掲載されています。

手こぎボートのそばを通ったものについて、距離は約50フィート、頭は水面から18インチほど出ており、体をうねらせて進んだと述べています。

現代の紹介記事だけでなく、当時の報道までたどれる目撃例です。

ただし、同記事の後半には巨人ポール・バニヤンと青い牛が魚を湖へ飛ばしたという、明らかにユーモラスな物語も載っています。

一つの記事の中でも、目撃者の説明と冗談めいた由来話を分けて読む必要があります。

当時の報道を読む:TIME、1944年8月21日「IDAHO: Slimy Slim」

新聞を追いたい人には、66ページの資料ファイルがある

アイダホ大学図書館の公開目録には、マッコール公共図書館所蔵の「Sharlie Folder」が登録されています。

説明によると、1944年8月3日から2015年1月22日までに関係する66ページの資料ファイルです。

新聞や雑誌などの関連資料をたどる入口になります。

ただし、今回は目録情報を確認した段階で、66ページすべてを閲覧したわけではありません。

目録の期間を、そのまま目撃が続いた期間や最後の目撃日と読み替えることはできません。

資料を探す:アイダホ大学図書館「Sharlie Folder」

写真はある?シャーリーの正体を判断する前に確かめたいこと

湖の水中を泳ぐシャーリーの想像図

怪物の名前で画像を探すときには、目撃写真、観光用の造形物、イラストを分けて見る必要があります。

大切なのは、怪物に見える画像があるかどうかだけではありません。

誰が、いつ、湖のどこで撮り、元の画像がどこに掲載されたのかが、目撃の記録として読むための手掛かりになります。

本記事で参照した資料からは、シャーリーという未知動物の存在を確定できる写真を確認できませんでした。

図書館の資料も、目録には利用・ダウンロードの制限が明記されています。

そのため、当時の新聞写真を自由に転載できるものとして扱わず、所蔵先へのリンクを掲載しています。

丸太説や波の見間違いで、全部を説明できるのか

最初の話に丸太が登場するからといって、「結局、流木だった」と結論を先取りすることはできません。

目撃者が丸太だと思ったことと、回収して流木だと確認されたことは別だからです。

BoiseDevは、別の説明としてチョウザメ説と、湖の水が往復する「セイシュ(静振)」を紹介しています。

ただし、湖からシャーリーと同定されたチョウザメを採集したという報告ではありません。

大きな魚を候補にすることと、各目撃の頭やこぶ、推定体長まで説明することは分けて考える必要があります。

NOAAの解説によると、静振は湖などの閉じた、または半ば閉じた水域に起こる定在波で、風などによって押された水が戻り、振動を続ける現象です。

船が見えないから水面の動きは怪物のものだ、と即断できない理由になります。

一方、静振という現象の存在だけで、頭や顎を見たという特定の報告まで解決したことにはなりません。

参照:NOAA「What is a seiche?」

結論:シャーリーは、パイエット湖の目撃談に由来し、新聞や地域文化の中で育ってきたUMAです。

正体は今回確認した範囲では未特定で、実在を確定する写真や標本も確認できていません。

それでも、丸太のようなものが動いたという話から、名前を募集するほど親しまれる存在になった過程には、この湖ならではの魅力があります。

湖面を見る楽しみと、記録を確かめる楽しみ。

シャーリーは、その両方を残している怪物なのです。

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