オンザの正体はピューマ?メキシコの「第3の大型ネコ」と1986年の標本

岩場に立つ細身で脚の長いオンザの想像図 海外のUMA

毛色はピューマに似ている。

けれど体はもっと細く、脚が長い。

メキシコの山地では、そんな大型のネコが「オンザ」と呼ばれ、ジャガーともピューマとも違う動物ではないかと注目されました。

山の向こうに、まだ知られていないネコがいるのか。

この話が面白いのは、噂だけで終わらず、オンザとされた個体が実際に研究へ回されたことです。

1986年に得られた標本は、分子解析で北米のピューマと区別できないという結果でした。

ただし、オンザという呼び名は土地によって指す動物が変わります。

正体を知るには、「どこのオンザか」と「どの標本を調べたのか」を分ける必要があります。

オンザとは?ピューマに似ているのに、別の獣と呼ばれた理由

メキシコの林を歩くピューマに似たオンザの挿絵

ここで取り上げるのは、メキシコ西部のシエラ・マドレ山地、特にシナロア州と結び付いた大型ネコの話です。

1996年の研究論文は、地元で語られるレオネス、ティグレス、オンザという区別を紹介しています。

レオネスはこの文脈ではピューマ、ティグレスはジャガーを指します。

日本語で「ライオン」「トラ」と直訳すると、アフリカやアジアの猛獣までメキシコにいたように読めてしまいます。

オンザを調べるときは、生き物の姿だけでなく、土地の呼び方にも目を向けたいところです。

奇妙さは巨大さよりも、体の比率にあった

報告で目を引くのは、ピューマに似た色をしながら、体がほっそりして脚が長いという点です。

角や翼を持つ怪物ではありません。

よく知る獣に似ているのに、どこか違う。

その小さなずれが、もう一種類いるのではないかという疑問を生みました。

一方、見た目の違いを感じたことと、別の種であることは同じではありません。

ここで必要になるのが、印象を何度も語り直すことではなく、実物を比較する作業です。

オンザの話は、のちにその段階へ進みます。

1986年のオンザ事件――夜に撃たれたネコが研究対象になるまで

夕暮れの茂みから顔を出すオンザの挿絵

シナロア州で「ジャガーではない」と気付かれた個体

研究論文の事件概要によると、1986年1月1日の夜、シナロア州の牧場主アンドレス・ロドリゲス・ムリージョが大型ネコを撃ちました。

最初はジャガーだと思ったものの、調べると違い、ピューマとも異なるように見えたといいます。

隣人のマヌエル・ベガは、その動物をオンザと呼びました。

この出来事は、「遠くを横切る影を一瞬見た」というタイプの目撃談とは違います。

死体があり、組織を調べる道が開けたからです。

ただし、標本があるからといって、地元で付けられた名前まで新種として保証されるわけではありません。

写真を探すなら、事件の年と資料の性格を確認したい

1996年論文の図1には、1986年にメキシコのシエラ・マドレ西部で撃たれたオンザという説明が付いています。

今回確認した検索可能な論文情報では図の説明を追えましたが、画像原版と転載条件の確認には至っていません。

そのため、ここでは別のピューマ写真を事件写真として置かず、論文の書誌と要旨を公開する大学のページへ案内します。

研究資料:Dratchほか(1996)オンザ標本の分子遺伝学的同定

記事中の生きているネコの挿絵は、この標本の撮影記録ではありません。

事件資料と見比べたい場合は、撮影年や個体の説明が付いた原資料を選ぶのが確実です。

オンザの正体は?分子解析の答えと、名前に残ったもう一つの謎

岩の上で休むピューマ型のオンザを描いた挿絵

調べた標本は、北米のピューマと区別できなかった

Dratchらは、1986年個体の組織を使い、タンパク質とミトコンドリアDNAを比較しました。

大学公開の要旨に示された結果は、北米のピューマと区別できなかったというものです。

この標本を「DNAでも正体不明だったUMA」と紹介するのは誤りです。

外見が普通と違って感じられても、比較した分子の特徴はピューマの範囲だった。

少なくとも、この個体については新種説よりピューマという説明を支持する結果です。

未知の動物への期待を、標本を使って確かめた事例といえます。

ジャガランディもオンザと呼ばれる――名前と種は一対一ではない

もう一つ重要なのが、Ernesto Alvarado Reyesによる2008年の論考です。

この論考は、オンザという名が地域によって異なるネコ科動物に使われ、同じ種の見た目の違いに別名が与えられる場合もあると指摘しています。

例として挙げられるのが、毛色などに変異のあるジャガランディです。

つまり、「オンザを見た」という証言を集めるだけでは、同じ動物の記録が積み上がっているとは限りません。

シナロアの大型ネコと、別の土地でオンザと呼ばれる小型のネコを一つの図鑑の姿へ押し込めると、かえって謎を増やしてしまいます。

読む:Alvarado Reyes(2008)「The legend of the Mexican onza」掲載論考の本文

結論:1986年標本の答えはピューマ、オンザという呼び名は一つの種ではない

オンザの代表的な1986年標本は、分子解析ではピューマでした。

ただし、その結果は年代も場所も違うすべての話を一件ずつ鑑定したものではありません。

同時に、未検証の話が残ること自体を、新種がいる証拠にすることもできません。

オンザの面白さは、奇妙な姿の噂が実物の研究へつながったこと、そして一つの名前の背後に複数の動物が隠れうることにあります。

山で見た獣は何だったのか。

その問いに近づくには、姿と標本に加え、現地の人がその名前で何を呼んでいるのかを聞く必要があるのです。

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