湖面を長い背中がうねり、黒い目をした何かが、また水の下へ消えていく。
アメリカ・モンタナ州のフラットヘッド湖には、ウナギのように細長い、大きな生き物の話があります。
フレッシー、あるいはフロッシーと呼ばれるこの怪物には、少し意外な入口があります。
地元の博物館では、湖で捕まった巨大な魚が紹介されているのです。
それなら正体は解決済みなのでしょうか。
結論は、巨大チョウザメの捕獲は確認できますが、それでフレッシーの目撃全体が説明されたわけではありません。
伝承、目撃談、実物の魚を分けて追うと、この湖の謎がよく見えてきます。
フレッシーとは?長い水獣と、丘になった怪物の物語

巨大なウナギなのか、大きな魚なのか
湖の環境保全団体Flathead Lakersは、フレッシーの姿を褐色から青黒い色の、ウナギのような生き物として紹介しています。
一方、巨大な魚のように見えたという報告もあるといいます。
同じ湖の怪物という呼び名でも、語られる輪郭は一つではありません。
長くうねるものと、魚のようなものを、最初から一種類の姿へ重ねないことが大切です。
同団体は目撃の記録を受け付けています。
地元にとっては、古い本の中だけの名前ではなく、水面の異変を見た人が話を寄せる相手のある伝説でもあるのです。
地域団体Flathead Lakersによるフレッシーの紹介
怪物の体が、湖畔の丘になったという語り
湖の怪物にまつわる物語は、近代の目撃集だけにあるわけではありません。
モンタナ大学の2014年の取材は、クートネイ語の録音を聞き、書き起こす人々の仕事を伝えています。
取材中、キャサリンとルイーズ・アンドリュー姉妹は、湖の怪物について語りました。
鳥の妻が怪物にハックルベリーの実を与えていたところ、嫉妬した夫がそれを殺し、湖を出て死んだ怪物の体がサリバン・ヒルになったという筋です。
姉妹は細部を確かめ合いながら話しており、記者もそのやり取りを残しています。
これは土地と言葉に結び付いた伝承であり、丘から未知の動物の死骸が発掘されたという報告ではありません。
現代のフレッシーの写真を探すだけでは、この物語にはたどり着きにくいかもしれません。
湖の向こうに見える丘にも怪物の話が重なると知ると、土地の眺めが少し違って感じられます。
2005年の目撃談――泳いだ直後の水面に、長い背中が現れた

船のバッテリーが上がり、迎えを待っていた夫妻
NBC Montanaが2018年に取材したジム・マンリーと妻ジュリアは、2005年にビッグ・アーム付近で何かを見たと話しています。
船のバッテリーが上がり、迎えを待っていたときのことでした。
夫妻は船のそばで泳いだ後、休んでいるところで音を聞いたといいます。
ジムの説明では、見えていた部分は約25フィート、約7.6メートルあり、こぶのような部分があったというものです。
これは引き上げた動物の実測値ではなく、目撃者の見積もりです。
ただ、本人が強く気にしていたのは形だけではなく、大きな水しぶきの音でもありました。
記録を集めた魚類の専門家は、自分では見ていない
同じ取材には、湖で長く働いた元魚類生物学者レイニー・ハンゼルも登場します。
彼は1993年から目撃記録を集めましたが、自分自身は怪物を見たことがないと説明しています。
専門家が記録を残していることと、専門家が未知種を確認したことは別です。
目撃者の話を残す作業の価値は、種の認定がなくても失われません。
当時の写真や動画は見られる?
NBCの記事は現地取材の写真やインタビューを案内しています。
ただし、インタビュー映像があることと、怪物を撮影した映像があることを混同してはいけません。
同記事でタミ・アビソンは8ミリフィルムを撮ったと述べていますが、取材時には見つからないとしていました。
そのため、この記事でもそのフィルムを確認した、映っているものを分析した、とはしていません。
目撃者への取材を見る:NBC Montana、2018年7月
博物館の巨大魚がフレッシー?1955年の捕獲と正体の考え方

実際に捕まったのは約2.3メートルのチョウザメ
ポルソン・フラットヘッド湖博物館の案内には、1955年に湖で捕獲された、長さ7.5フィート、重さ181ポンドのチョウザメが登場します。
換算すると、およそ2.3メートル、82キログラムです。
こちらは、正体不明の影を見たというだけの話ではありません。
具体的な魚の捕獲と、博物館の展示案内につながる記録です。
案内自体も、それが伝説の怪物なのかどうかは断定していません。
「怪物のいる博物館」という紹介を、そのまま未知の怪物の標本が科学的に確認されたという意味へ読み替えることはできません。
チョウザメ説が説明する部分、残る部分
大きな魚が湖にいたという実例は、魚のような何かを見たという報告を考える手掛かりになります。
一方で、1955年の一匹と、2005年に夫妻が見たものを結ぶ証拠は、今回の資料にはありません。
Flathead Lakersは、部族の魚類生物学者による、湖に在来のチョウザメ個体群はなく、過去の捕獲個体は持ち込まれたものだろうという見方も紹介しています。
捕まった一匹から、湖底に多数の巨大魚が繁殖していると話を広げるのも慎重であるべきでしょう。
目撃の姿がそろわない以上、すべてが同じ原因だったとも限りません。
正体の候補があることと、個別の目撃が解決したことは分けて考えます。
結論:巨大魚は実在したが、フレッシー全体の正体は未確定
確認できるのは大きなチョウザメの捕獲と、湖の異変を見たという人々の証言です。
後者を一種類の未知動物と認める根拠も、前者で一括して説明する根拠も、今回確認した資料だけでは足りません。
フレッシーの面白さは、正体が分からないという一点だけではありません。
怪物の体だと語られる丘、泳いだ直後の目撃、博物館に残る実物の魚が、同じ湖をめぐって隣り合っているところにあります。


コメント