スクヴォンクとは?泣きすぎて消えるUMAと、袋に残った涙の物語

森で涙を流すしわの多いスクヴォンクの挿絵 海外のUMA

森の奥で泣き声がする。

足元には涙の跡が続き、その先には、自分の姿を悲しんでいる奇妙な獣がいる。

スクヴォンクは、追い詰められると体まで涙に溶けてしまうと語られる、少し切ないUMAです。

スクォンクとも表記されるこの存在の出どころをたどると、木こりたちの怪物話を集めた古い本に行き着きます。

正体を先に答えるなら、実物が確認された動物ではなく、1910年の本に姿と物語が残る民話的な存在です。

それでも、捕まえたはずの獣が袋の中で消えてしまう話は、ほかのUMAとは違う不思議な余韻を残します。

スクヴォンクはどんなUMA?泣き声で居場所が分かる森の獣

針葉樹の枝の下でうずくまるスクヴォンクの挿絵

皮膚が合わず、たそがれに歩く

ウィリアム・T・コックスの『Fearsome Creatures of the Lumberwoods』(1910年)は、スクヴォンクのすむ場所を、米国ペンシルベニア州のヘムロックの森としています。

ヘムロックは、ここではツガ類の針葉樹を指します。

体に合わないような皮膚には、いぼやほくろがあり、その姿を悲しんで絶えず泣いているという設定です。

人目を避け、夕暮れや薄暗い時間に動き回ります。

足跡の形よりも、涙の跡が手掛かりになる。

森の怪物なのに、人を追いかけるより、自分の悲しみに気を取られているところが独特です。

同書では、驚かされたり、逃げ場を失ったりすると、涙の中に自分自身を溶かしてしまうと語られます。

1910年の挿絵に残る姿

原著には、コーアート・デュ・ボアによる挿絵もあります。

古い絵を見ると、体のしわ、細い脚、大きな目から落ちる涙が強調されているのが分かります。

1910年の本に掲載されたコーアート・デュ・ボアによるスクヴォンクの挿絵

出典:Coert Du Boisによる1910年の挿絵。

Lumberwoods掲載の原文・図版(原著の文章・挿絵はパブリックドメインと明記)。

これは目撃時に撮影された写真ではありません。

この獣がどのように想像され、読者に伝えられたのかを知るための、物語の図版です。

捕まえたはずなのに消えた?袋に残った涙と泡

麻袋のそばで涙と泡へと姿を変えるスクヴォンクを描いた物語の挿絵

J・P・ウェントリングの捕獲譚

1910年の本には、モント・アルト付近でスクヴォンクを捕まえたという、J・P・ウェントリングの話が登場します。

彼はスクヴォンクのまねをして誘い、袋の中へ飛び込ませることに成功したといいます。

ところが家へ運んでいる途中で、突然、袋が軽くなり、泣き声もやんでしまいました。

袋を下ろして中を見ると、残っていたのは涙と泡だけでした。

うまく捕まえたはずなのに、その証拠が消えてしまう。

「捕まらない」のではなく、「捕まえても持ち帰れない」という仕掛けが、この話の面白さです。

ただし、これは本に収められた捕獲譚であり、保存された試料や、日時の分かる捕獲記録を確認できたという意味ではありません。

原著は、霜の降りる月夜には涙の出方が遅くなり、獣も動きたがらないため、探しやすいとまで説明します。

泣いて溶けるという不思議な性質に、探し方まで添えられている。

もっともらしい細部があるからこそ、聞き手は「それなら捕まえられるかも」と想像してしまいます。

1939年の本では、水たまりを恐れる獣へ

ヘンリー・H・トライオンの『Fearsome Critters』(1939年)にも、スクヴォンクは登場します。

こちらでも皮膚に悩む泣き虫ですが、月夜に動きたがらない理由は、月明かりの水たまりで自分の姿を見るのを恐れるからだと説明されています。

1910年の「涙がゆっくり出る夜」と、1939年の「自分の姿を見たくない夜」は、同じ月夜でも語り方が違います。

後の本には、水に入ると片側の足の特徴のために円を描いて泳いでしまう、という突飛な来歴まで加わります。

ここを動物図鑑の改訂情報のように読んでしまうと、話が混乱します。

同じ怪物が、語り直される中で違った性格や来歴を与えられていると読むほうが、物語の変化を楽しめます。

比較する原文:Henry H. Tryon『Fearsome Critters』のスクヴォンク(1939年)

スクヴォンクの正体は?目撃証拠と木こりの物語を分ける

月明かりの水たまりに背を向けるスクヴォンクの挿絵

学名のような名前も、物語の仕掛け

1910年の本文には、Lacrimacorpus dissolvensという、学名の形をした名前も付いています。

これだけ見ると、昔の研究者が分類した実在動物なのかと思うかもしれません。

しかし、コックス自身が序文で示しているのは、木こりたちの想像から生まれた怪物の説明と絵を残す、という目的です。

本は、新人を驚かせる怪物話や、別の伐採地へ伝わるうちに膨らんでいく話にも触れています。

ラテン語風の名前が載っていることは、未知の動物の標本が採取され、実在が確かめられた証拠にはなりません。

物語を博物誌のように語る、そのユーモアも含めて読む本です。

著者の説明:『Fearsome Creatures of the Lumberwoods』序文

州の公文書館に残る放送原稿

この話が本の中だけにとどまらなかったことは、ペンシルベニア州の歴史資料にも見えます。

州の公文書館が公開するピート・ワンバック関連資料には、「The Weeping Squonk」という放送原稿が残っています。

そこでも、泣く獣と、袋に残る涙の話が語り直されています。

ただし、公文書館に保管されているのは、物語を伝えた原稿です。

州がスクヴォンクの実在を認定した記録として読むものではありません。

確認できるのは、泣き虫の獣が、土地の話として語り継がれてきたことです。

資料:ペンシルベニア州公文書館「The Weeping Squonk」原稿(PDF)

結論:実物が確認されたUMAではなく、記録の残る森の民話

結論:スクヴォンクは、今回確認した資料では、実際の捕獲や目撃写真によって裏付けられた動物ではなく、木こりの怪物話を伝える本と、その後の再話に残る存在です。

だから、涙の成分から正体が分かったという研究や、袋から消えた瞬間の写真を紹介することはできません。

残っている原文を読むと、怖い怪物のはずなのに、どこか放っておけない姿が浮かびます。

捕まえようとすれば、ますます泣いて消えてしまう。

そんな獣に出会ったら、袋を用意するよりも、泣きやむまでそっとしておきたくなるかもしれません。

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