山頂付近の岩に尾を引っ掛け、谷を見下ろす巨大な生き物。
スライドロック・ボルターは、獲物が来ると尾を外し、山の斜面を一気に滑り落ちるとされるUMAです。
口は耳の後ろまで裂け、目は小さく、頭は巨大。
足で走る必要はありません。
1910年の原典に残る正体は、コロラドの急斜面を舞台にした木こりの怪物譚です。
滑落する怖さを、そのまま生き物の動きに変えています。
山の斜面に潜むボルター|尾で岩をつかむ巨体

45度を超える斜面を選ぶ
コックスの原典では、この怪物は45度を超える急な山腹を好むとされます。
尾の先は二つに分かれ、鉤のような部分で尾根の岩をつかみます。
巨大な頭を下へ向け、尾だけで上につかまる姿を思い浮かべると、山にぶら下がる重い袋のようでもあります。
カジカに似た大きな口が、谷を通る獲物へ向きます。
谷を滑り、向かいの山まで上る
怪物は口から滑りやすい物質を垂らし、尾を外して滑走を始めるといいます。
通り道の木々をなぎ倒し、その勢いで向かいの山腹まで上がります。
滑り落ちる運動と、次の待ち伏せ場所への移動が一度につながる仕掛けです。
獲物を追って歩く獣とは違い、地形そのものが狩りの道具になっています。
1910年の挿絵と退治譚|観光客のふりをした人形

リザードヘッド周辺を舞台にした物語
1910年の本には、森林のレンジャーがボルターを退治する話も載っています。
リザードヘッドやオフィールの峰々、リコといった地名が登場します。
おとりは、観光客の格好をさせた人形です。
上着や半ズボン、案内書まで用意する細部が、実際に山へ来る人をからかうような味わいを生みます。
リコの町まで巻き込む大げさな結末
怪物がおとりへ滑り込むと、仕掛けによって大きな爆発が起こります。
話はリコの町の半分にまで被害が及ぶほど大げさになります。
退治して終わりではなく、退治そのものが大騒動になるのが落ちです。
上の1910年の図版も、この荒唐無稽な体を確かめるための挿絵であり、災害を撮影した写真ではありません。
出典:原典・掲載資料を読む
ボルターは実在する?山の怪物と落石の境界

地形の名前があっても災害記録にはならない
リコの爆発を、実際に発生した被災事件として紹介する根拠は、この怪物譚にはありません。
実在する土地が舞台になっていても、そこに書かれたすべてが歴史記録になるわけではありません。
本の序文では、著者自身が木こりの想像から生まれた生き物を残す目的を述べています。
落石や山腹の崩壊を、未知動物の活動と認定した研究報告ではないのです。
結論:山を滑る恐怖を一頭の獣にした怪物譚
結論:スライドロック・ボルターは、急斜面を滑る巨体と、観光客のおとりを使った退治譚が特徴の怪物です。
原典から確認できるのは1910年の物語であり、実在動物の発見ではありません。
山の上から何かが落ちてきたら、人は逃げる方向を考える暇さえないかもしれない。
その怖さに、尾の鉤や巨大な口、反対側まで登る勢いを加えたところが、この怪獣の迫力を生んでいます。
出典:原典・掲載資料を読む


コメント