夕暮れの川で、黒い翼が水面すれすれに迫ってくる。
開いた口には白い歯が並び、人が身を沈めると頭上を通り過ぎる。
オリチアウは、カメルーンで探検家が遭遇したと記した、巨大なコウモリのようなUMAです。
翼を広げると約3.7mともいわれますが、その数字はどこから来たのでしょう。
正体は未確認で、捕獲して測った個体も示されていません。
今回は、体験を記した本人の二冊の本を比べます。
オリチアウとは?カメルーンの川を飛ぶ黒い怪物

黒い膜翼、平たい顔、白い歯
目撃者は、動物採集家のアイヴァン・T・サンダーソンです。
1972年の著書『Investigating the Unexplained』では、遭遇した年を1932年、場所をカメルーンのアスンボ山地としています。
その回想に登場するのは、全身が黒く、先のとがった犬顔よりも猿に近い口元を持つ生き物。
翼を動かして川沿いを飛び、口には目立つ白い歯があったとされます。
鳥のように空を飛ぶのに、近づくと口の中が鳥とは違って見えた。
この取り合わせが、オリチアウの印象を強くしています。
名前を口にしたのは土地の猟師だった
1937年の『Animal Treasure』では、帰営後、サンダーソンが黒い大きなコウモリについて尋ねると、猟師から「オリチアウ」という名が返ってきたと書かれています。
ただし、本に記録された現地の反応は、サンダーソンを通して読者に届いたものです。
猟師たちの独立した証言録や、地域全体の伝承調査がここに収録されているわけではありません。
怖い名前があったことと、同じ動物を全員が見ていたことは別。
その境目を意識すると、名前の背後にどんな存在が想像されていたのかも気になってきます。
川で何が起きた?1937年の本に残された遭遇場面

コウモリの採集中に現れた黒い影
『Animal Treasure』300〜302ページでは、川に集まるコウモリを採集中の出来事として描かれています。
サンダーソンが水中で体勢を崩したところへ、同行者が警告の声を上げました。
本人が振り向くと、ワシほどの大きさの黒いものが低く飛んできたというのです。
水に身を沈めてかわした後、その生き物は再び川沿いに現れ、同行者の上を通って暗闇へ消えたと続きます。
ここで押さえたいのは、初期の本の大きさの表現が「ワシほど」だったことです。
この遭遇を述べる箇所には、翼開長12フィートという数値は出てきません。
1972年には、日記に基づく約3.7mという説明が加わる
後年の著書でサンダーソンは、1970年に同行者と再会し、当時の日記とも照らし合わせたと説明しています。
川幅と翼が占める割合をもとに、少なくとも12フィートほどだったと記しています。
約3.7mは、飛んでいる動物の見え方から推定された値です。
翼を伸ばして巻尺で測った結果ではありません。
後年の詳しい説明を読むときも、1937年の文章に最初から同じ数字があったことにはしない。
二冊を並べると、体験そのものと、その後に加えられた説明を分けて追えます。
原典と遭遇時の写真は見られる?
『Animal Treasure』(1937年)の原本画像を読む
『Investigating the Unexplained』(1972年)の第3章を読む
確認した遭遇記述には、その飛行個体を写した現場写真や、捕獲標本は提示されていません。
本の画像や怪物の絵が検索結果に出ても、「当時撮影されたオリチアウの写真」とは読み替えられません。
ウマヅラコウモリ説は成り立つ?実在の動物と比べる

アフリカ最大のコウモリにも意外な顔がある
比較したくなる実在種が、ウマヅラコウモリ(Hypsignathus monstrosus)です。
保全団体Bat Conservation Internationalは、アフリカ最大のコウモリと紹介し、翼開長を69〜97cmとしています。
雄は大きな鼻先と喉頭を持ち、繁殖時には川沿いの木に集まって大きな声を出すことがあります。
果物を食べ、特にイチジクを好むとされます。
見慣れない顔の大きなコウモリは、現実のアフリカにもいるのです。
姿を比べるなら、まず実在種の写真を見ておくと、想像だけの議論から一歩進めます。
本人はウマヅラコウモリを知らなかったのか
1937年の本には、怪物との遭遇前に、ウマヅラコウモリを採集していたと書かれています。
したがって「普通のコウモリを初めて見て驚いた」という説明だけでは、本人の記述を十分に扱えていません。
一方、既知種を知っている人でも、暗い場所を飛ぶ別の個体の大きさや距離を必ず正確に判断できるとは限りません。
既知種説を検討することと、それで正体が解決したと断定することは分けたいところです。
翼竜説より、本人が考えていたのは巨大なコウモリ
1972年の著書では、サンダーソン自身は翼竜の生き残りを主張しているのではないと明記しています。
黒い膜翼や歯があるという話から、勝手に恐竜時代の動物へ置き換えるのも避けたい読み方です。
結論:巨大コウモリと確定はできないが、読み比べられる体験記が残る
オリチアウの正体は、今回確認した資料では特定できません。
残っているのは探検家の体験記と後年の説明で、未知の種と確認された標本ではありません。
それでも、川に立つ採集家の前へ飛んできた黒いものは何だったのか。
「約3.7m」という数字だけより、最初の記述まで戻るほうが、謎の輪郭がよく見えてきます。


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