天池の怪物の正体は?6つの影が泳いだ2007年の映像と巨大マス説

火口湖の水面に頭と背を出す天池の怪物を描いた挿絵 海外のUMA

湖の真ん中に、さっきまでなかった黒い影が浮かぶ。

一つと思ったら、その周りにも次々と別の影が現れる。

2007年、長白山の天池では、6つの生き物のようなものを撮影したというテレビ記者の報告が話題になりました。

アザラシに似ていたという説明もあれば、放流されたマスの子孫ではないかという説もあります。

この違いは、いったいどこから生まれたのでしょうか。

正体については、今回確認した当時の報道だけでは特定できません。

巨大マス説も、撮影された個体を捕獲・鑑定して確定した結論ではなく、湖への放流歴を根拠に出された説明です。

まずは、記者が何を見たと話したのかをたどります。

天池の怪物とは?国境の火口湖に現れる黒い影

山々に囲まれた天池を泳ぐ正体不明の水獣の挿絵

16の峰に囲まれた、山頂の湖

舞台は中国と北朝鮮の国境にある長白山の天池です。

スミソニアンの火山資料は、山頂のカルデラを満たす湖として紹介しています。

UNESCOの紹介では、湖を囲むのは16の峰。

火山の噴火が生んだ地形に水がたまり、山の上に大きな水面が広がっています。

怪物の噂の舞台は、信仰の山でもある

UNESCOは、長白山が古くから神聖な場所とされてきたことも説明しています。

天池の近くには、かつて山の神をまつった八卦廟がありました。

山に向けられてきた畏れは、近代の怪物報道より広い文化的背景を持っています。

ただし、山の神への信仰を、そのまま水獣の伝承の起源とする根拠はありません。

怪物の最古の目撃記録についても、今回は原典まで確認できていません。

アザラシのような姿が、水面を進んだ?

2007年の報道で撮影者が語ったのは、アザラシに似た、ひれのようなものを持つ姿でした。

長い首を持つ恐竜のような動物と決めつけると、この証言とは離れてしまいます。

姿そのものに加えて気になるのは、現れた数です。

一つの大きな影ではなく、複数が一緒に動いていたといいます。

2007年の目撃と映像|日の出を撮りに行った記者の報告

天池の水面を並んで進む6つの水獣の影を題材にした挿絵

日の出を撮るはずだった朝

新華社の2007年9月10日付の記事によると、地元テレビ局のZhuo Yongsheng記者は、9月6日に案内人2人と山へ向かいました。

目的は日の出の撮影でした。

雲が晴れて湖が見えると、水面に動く黒い物体が現れます。

ほかにも5つが現れ、合計6つになったというのが、記者の説明です。

二つずつ並び、ときには潜って見えなくなったとも報じられました。

約90分の観察と、20分の撮影

記事が伝える観察時間は約1時間半、映像の長さは20分です。

「90分の連続映像がある」と読み替えることはできません。

目撃した時間のすべてが映像に残っているとは限らない。

この違いを押さえると、証言で伝えられた動きと、映像で確かめられる動きを分けて考えられます。

当時の撮影資料をたどる

記者が提供した画像については、China.org.cn掲載の当時の報道へ案内します。

転載条件を確認できていないため、ここでは原掲載へのリンクを載せています。

2007年の報道:「Tianchi Monster」Caught on Film

元の20分映像の全編や撮影機器の原データは、今回確認できていません。

ここで紹介したのは報道に残る観察内容であり、独自の映像分析の結果ではありません。

巨大マス説は本当?放流の記録と、正体が確定しない理由

火口湖の深い水中を泳ぐ大きな魚状の天池の怪物の挿絵

湖へ放した魚が、怪物の候補になった

2007年11月15日のChina.org.cnは、研究者Kim Li-taeによる放流魚説を紹介しました。

彼の説明では、1960年に9匹のマスを湖へ放したといいます。

その子孫が深い場所で育っているのではないかというのが、怪物と魚を結び付けた考え方です。

同記事は、2000年に浅い場所で調べた魚の寸法を85cm、7.7kgと伝えていますが、深い場所の魚は調べられていないとしています。

85cmの魚は、撮影された怪物そのものではない

この魚の寸法を、そのまま6つの影の大きさとして使うことはできません。

別の年に調べた魚と、撮影された対象をつなぐ確認が必要だからです。

魚がいるという話から、未知の動物を考えなくても説明できる可能性は見えてきます。

一方で、撮影されたものを捕獲して魚と鑑定したという報告にはなっていません。

「怪物の正体が巨大マスと判明した」と結論づけるのは早い段階です。

ここは、湖に生息する魚についての説明と、目撃された対象の同定を分けて読む必要があります。

結論:6つの影の正体は未特定、マス説は仮説

2007年の天池では、テレビ記者が6つの動く姿を観察し、20分の映像を撮ったと報じられています。

その後、過去に放流したマスの子孫ではないかという説明が出ました。

正体は、今回確認した報道の範囲では未特定です。

撮影された対象を捕獲して魚と同定したわけでも、未知の水獣と確認したわけでもありません。

この話の面白さは、一匹の巨大な影ではなく、6つが並んで泳いだという観察にあります。

その動きが何だったのかを確かめるには、原映像と観察条件をたどる作業が、次の重要な手掛かりになります。

参考資料・原掲載へのリンク

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