コン・リットの正体は?ベトナムに漂着した「海のムカデ」と巨大甲殻類説

節のある長い体と側面の突起を持つコン・リットの挿絵 海外のUMA

長い胴体が、同じ形の硬い節に分かれている。

その両側から突起が並ぶ姿は、大きなヘビというより、海を泳ぐ巨大な節足動物を思わせます。

コン・リットは、ベトナムで奇妙な死骸が漂着したと語られる海のUMAです。

名前を見て、海に巨大なムカデがいると想像した人もいるかもしれません。

ところが、その正体を考えた研究者が提案したのは、少し違う仲間でした。

正体は未特定で、巨大甲殻類という説明も仮説です。

残された話のどの部分が、その発想につながったのでしょうか。

コン・リットとは?硬い節に分かれた海の怪物

海中で長い節状の体をくねらせるコン・リットの挿絵

「海のムカデ」は分類名ではない

コン・リットは、英語の紹介でsea millipedeやsea centipedeと呼ばれることがあります。

日本語では「海のムカデ」といった呼び方で、その異様な姿を伝えられるUMAです。

動物学者カール・シューカーは2014年の解説で、これらは見た目を表す通称であり、動物学上の分類ではないと念を押しています。

ムカデの名が付くから、陸のムカデがそのまま巨大化したものとは限りません。

繰り返す節と、左右の突起

漂着した体の話では、硬い節が連続し、各節の左右に突起があったとされています。

頭が欠けていたとされるため、顔つきはこの死骸の話から復元できません。

未知の怪物を想像するとき、まず顔を見たくなるものです。

コン・リットの場合は、その最も知りたい部分が欠け、胴体の構造が謎の中心になっています。

1883年の漂着死骸|見たという青年は38年後に語った

ベトナム沿岸を背景に節のある体を見せるコン・リットの挿絵

ホンガイの岸辺にあったとされる長い体

シューカーの解説によると、出来事の舞台はベトナムのアロン湾、ホンガイです。

1883年、頭を失って腐敗した死骸が岸へ流れ着き、当時18歳だったTran Van Conも触れたとされています。

伝えられた長さは60フィート、約18mです。

ただし、今も調べられる標本を測った値ではなく、漂着物について語られた寸法です。

死骸はひどく臭ったため、沖へ引き出されて沈められたという結末になっています。

もしそのまま残されていたら、調べられたものは何だったのか。

この話では、肝心の物体が手元から失われています。

発見の年と、証言の年を分ける

青年の話がクレンプフ博士に語られたのは、出来事から38年後とされています。

1883年のその場で科学者が死骸を調べた、という記録ではありません。

本記事で参照したのはシューカーによる後年の解説です。

クレンプフの原聴取記録そのものは、今回確認できていません。

死骸の写真や、保存された標本は?

今回調べた資料からは、来歴を確認できる1883年の死骸写真や、現存する組織標本を確認できませんでした。

シューカーの記事冒頭の絵は、Tim Morrisが巨大甲殻類説をもとに描いたものと明記されています。

シューカーの原記事で、漂着物の話とTim Morrisの復元画を見る

復元画は、仮説を具体的な姿にする助けになります。

しかし、描かれた頭や脚を、失われた死骸で確認済みの特徴として戻すことはできません。

巨大甲殻類説はどこまで考えられる?正体と大きさの壁

硬い節と多数の付属肢を持つ甲殻類状のコン・リットの挿絵

シューカーが考えたのは、巨大な甲殻類

シューカーは、硬い体の覆いと、腐敗で失われた柔らかい部分があったのではないかという考えから、甲殻類説を提案しています。

彼が提案したのは「海のムカデの新種」ではなく、未知の甲殻類という説明です。

ただ、その分類を裏付ける体の一部が保存されているわけではありません。

記述を説明する候補として読む段階にとどまります。

実在する「巨大な甲殻類」と比べてみる

海に大きな甲殻類がいること自体は、空想ではありません。

モントレーベイ水族館は、ダイオウグソクムシを硬い外骨格と関節のある脚を持つ甲殻類として紹介しています。

同館の解説では、体長は最大40cmほど。

14本の脚で海底を動き、腹部の付属肢を呼吸にも使うという、陸のダンゴムシを連想させながら水中生活に適した動物です。

このような実在の姿を知ると、節のある海の動物を想像しやすくなります。

一方、40cmほどの動物がいることから、18mという話の裏付けが得られるわけではありません。

太古の巨大節足動物でも、寸法は証拠から考える

2007年にオンライン公表された研究では、ドイツで見つかった約46cmの鋏角の化石から、ウミサソリの一種Jaekelopterus rhenaniaeの全長を約2.5mと推定しています。

巨大さを論じる土台になったのは、実物の化石と、体の各部の比率です。

この研究は、コン・リットを発見した論文ではありません。

過去に大型の節足動物がいたことと、ベトナムの漂着物がその生き残りだったことの間には、まだ確認すべき段階があります。

結論:コン・リットは正体不明、甲殻類説も同定ではない

コン・リットは、失われた漂着物の証言をもとに語られるUMAで、正体は特定されていません。

巨大甲殻類説は節状の体を考える候補ですが、捕獲や標本の鑑定による答えではありません。

頭がないこと、物体が失われていること、証言が後年に記録されたことが、確かめる難しさにつながっています。

それでも、長い体に同じ硬い節が並んでいたという話は、普通の海の大蛇とは違う想像を誘います。

もし新しい資料が見つかるなら、顔より先に、その「節」が何だったのかを知りたい。

コン・リットの正体を考える鍵は、そこにあります。

参考資料・原掲載

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